第1章に関する事例

事例1 インターネットの誤った情報で、無関係な企業が批判の標的に

2017年 日本

原因

  • インターネット掲示板インターネット上のコミュニティの一種。インターネットで記事(スレッド、トピック)を書き込んだり、閲覧できるサービス。「BBS」「電子掲示板」とも言う。主な例として「5ちゃんねる」など。への誤った情報の投稿
  • 投稿内容を信じた人の、正義感などに基づく過度な行動

被害

  • 無関係の企業への抗議や非難の電話(最大 1日100件など)
  • 上記の電話による企業の営業妨害
  • 企業の風評被害根拠のない噂(風評)のために受ける、精神的・経済的な被害。

内容

関東地方の高速道路で、高速道路に停車していた車にトラックが追突し、2人が死亡する事故が起きた。事故の原因は、この車が別の車に悪質なあおり運転道路を走る車を、別の運転者が猛スピードで追いまわしたりして嫌がらせする行為のこと。交通の危険を生じさせ、社会問題になっている。 をされ、道路に無理に停車させられたため。あおり運転の犯人は逮捕された。

事件のあと、大手インターネット掲示板に、匿名で、このあおり運転の犯人の個人情報が投稿された(住所、犯人の父親が経営する企業の名など)。
この投稿を見たインターネットのユーザが、企業に対し、いっせいに誹謗中傷の投稿をした。情報はほかのSNSでも拡散し、企業に電話をして非難する者も続出した。

しかし、掲示板の情報は間違いで、この企業は全く関係なかった。企業は電話対応に追われて一時的に業務ができなくなり、さらに、ネガティブな情報が取引先に悪印象を与えないよう、対応に追われた。

解説

これは非常に多くの人の非難・批判が特定の相手に殺到する、いわゆる「炎上」という状態です。この騒ぎには次の要因がありました。

  • 掲示板の投稿者が無責任だったこと
  • 閲覧者が情報の正しさを確かめずに信じたこと
  • 情報が拡散される間に「事実のゆがみ」が起きたこと(事実と認識された)

インターネットは、多くの者が情報の拡散をするうちに、その情報が事実と信じられていく性質があります。嘘の情報に踊らされないためには次のことが大切です。

  • 感情的に情報を拡散しない
  • 情報を判断する冷静さを持つ
  • SNSでは、回ってきた情報の真偽を理解してから拡散する

なお「炎上」の対象の多くは、ルールを違反した者や犯罪者など、悪人的な立場の者です。このため、炎上に参加する人々は、正義感から自分は良いことをしていると感じやすくなります。そして、行動が行きすぎることがあります。このような過度な行動は、相手から法的に訴えられることがあるかもしれません。
見た情報によって行動する自分の状態を、冷静に見直すことが大切です。 


事例2 大手ホテルが、アルバイトが行ったSNSへの投稿を公式に謝罪

2011年 日本

原因

  • アルバイトの、 守秘義務職務をする者・職務をした者、契約をした者に対し、「職務上知った秘密を守る」「情報を公開しない」といった、契約上の義務のこと。 違反
  • SNS(インターネット)の公開性を考えずに投稿をしてしまったこと

被害

大手ホテルの社会的な信用の低下

内容

東京都内の大手ホテルに、有名人のカップルがプライベートに訪れた。これを見たアルバイトが、SNSに2人の様子を投稿。投稿の中に「夜も2人らしいね」とあったことから、この投稿は広く拡散され、多くの人が見た。

このアルバイトは過去にもホテルを利用した有名人の情報を投稿しており、投稿を見た者から「たとえアルバイトでも、利用者を暴露するのは、企業として問題だ」と批判が相次いだ。アルバイトはSNSのアカウントを削除したが、インターネット上に残った投稿の情報から本人の名前や学校名など個人情報が特定され、これがインターネット上で公開される騒ぎになった。

ホテル側は、総支配人(総責任者)の名前で、ウェブサイトに公式の謝罪文を公開。ホテルの社会的な信用問題に発展した。
アルバイトは解雇された。

解説

SNS(インターネット)への気軽さが、思わぬ問題を招いてしまった例です。
実は、同じような事件はいくつも起きています。なかには、投稿者を雇用している企業が、投稿者に巨額の損害賠償を請求した例もあります。

いずれも本人にとっては「軽い気持ち」「仲間うちの悪ふざけのつもり」の投稿です。しかし、この投稿が社会的な問題に発展しています。

この例のアルバイトの投稿は「〇〇さん、かわいかった」など気軽なものでした。しかしアルバイトは他者のプライベートな情報を公開したことや、ホテルが守らねばならない利用者情報の「守秘義務」を違反したことの2つを、社会から批判されました。
また、このアルバイトの個人情報はインターネット上に残ります。本人の社会的な信用が、その後の本人の就職活動などに影響することがあるかもしれません。

インターネットで発信をする時は、「どんなことが起きる可能性があるか」を予想しましょう。